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2014夏ドラマ感想~『HERO』第1・2話~

テレビドラマの個性というのは、コメディとシリアスの配合比率によって決定される。

と言ったら明らかに言いすぎだが、視聴者それぞれに好みの配合比率があり、近ごろは作り手の側でもベストな比率をあれこれ模索している感が強い。昔のドラマはそれが自然な形で、つまり現実の生活と同じような比率で、滑稽さと真剣さが混じりあっているものが多かったような気がするが、昨今のそれは、わりと意図的に削られたり盛られたりしているように思う。

コメディかシリアス、どちらかに大きく比率を寄せることで、そのコンテンツを特徴づけようとする意図。スリリングな展開やセンセーショナルな映像で視聴者の興味を惹きつけようという狙いゆえか、近ごろは特にシリアス方面に振り切った演出のドラマが多く、今季のドラマで言えば『家族狩り』や『ペテロの葬列』あたりは明らかにコメディを排除しシリアス一辺倒で走り切ろうという意図を感じる。

そういった意図が先走る感じはテレビドラマだけでなく、今どきのあらゆるジャンルのエンターテインメントに見られる傾向だが、キリがないのでここではこれ以上触れない。だが受け手の感情を一方向へ集中させようと計算されたコンテンツは、近年明らかに増加傾向にある。

『HERO』は平均視聴率34.3%を記録した検事ドラマの続編であり、最近のドラマの平均値に比べると、かなりコメディの比率が高いと言えるだろう。検事というお堅い設定でありながらそうであるという構図は、おそらく同局の『リーガル・ハイ』にも引き継がれている。これはフジテレビの特徴であるとも言えるし、このドラマの1stシーズンが放送されていた当時のドラマ界の空気とも言えるかもしれない。少なくともあの頃(2001年)は、今ほど意図的にシリアスに寄せられたドラマは多くなかったはずだ。

前作の化けもの級視聴率をバックグラウンドに、完全な鉄板コンテンツとして始まったこの続編。注目はやはり主人公・久利生(木村拓哉)の相方が雨宮(松たか子)から麻木(北川景子)に変わってどうなるかという点だろう。

正直1話目に関しては、新登場の北川景子の存在感よりも松たか子の不在感ばかりが際立つ内容であり、脚本もそれを先読みしたように、要所要所に前任者の思い出話を配置するなど、ある種設定上の弱点を逆手に取って利用するような展開が見られた。だがそれによって雨宮がけっして追い越せぬ絶対的な存在のようにも感じられ、麻木のスケールの小ささ、キャラクターの薄さが強調されてしまったようにも思う。

このドラマの軸は久利生と雨宮が繰り広げる丁々発止の口喧嘩であり、検事ドラマというシリアスな側面は、この二人が演じるコメディ部分のクオリティに支えられていた。『男女7人』の明石家さんまと大竹しのぶを例に出すまでもなく、と言っておいて例に出しているのだが、主人公とヒロインの口喧嘩がドラマ全体の屋台骨を支えるというケースは名作に多い。

その点、久利生と麻木になると、もちろん年齢差があるというのもあるが、互角の口喧嘩というのはどうやら難しい。年齢も経験も浅い麻木がいくら言い返しても久利生はビクともせず、二人の間に摩擦熱が発生しない。

1話目の時点では、物語の焦点が事件解決というよりも、久利生vs麻木という対立軸に絞られていたせいもあって(1話目なので、味方の中心人物からキャラの地盤固めをするのは当然のことだが)、むしろ「この二人」が以前の「あの二人」ほどがっぷり四つではないということが際立つ結果となった。全体にドラマとしてのクオリティの高さは再認識しつつも、その部分に関してはやや物足りなさを感じてしまった。コメディとシリアスの配合比率は相変わらず心地良いのだが、コメディの強度がやや足りないという感触があった。

だが2話目では、久利生と麻木の関係だけでなく、新たに検事vs弁護士(谷原章介)という大きな対立軸が持ち込まれたことで、久利生と麻木の間にしか生まれ得ない新たな関係が見えてきた。それはもちろん、共通の敵を迎えることで、普段は対立しがちな味方同士の間に連帯感が生まれ共闘態勢に入るといったパターンであるわけだが、その先に浮かび上がってくるのは、この二人の歳の差を生かした先輩後輩関係こそが、物語の新たな軸になるという構図である。

歳上の検事が歳下の事務官を教育する。そんな当たり前の構図を持ち前の正義感一発で乗り越え、対等に口ごたえをしてくる雨宮が前作の魅力であったわけだが、今作はそんなありがちな構図をありのままに受け止め、その当たり前の関係の中で久利生が麻木に何を教え、また逆に何を教わるのか。そんな「上司としての久利生」の振る舞いが、今作の魅力の軸であるのかもしれない。その点、ややシリアス寄りに軸が移ったといえるのかもしれないが。

とはいえ、コメディとシリアスの配合比率という意味で前作と変わらない印象があるのは、久利生の相方である麻木へのコメディ配分量を前任者に比べてやや減らし、そのぶんを地検の面々のコミカルなやりとりで補っている感があるからだろうか。

麻木が谷原章介演じる桜井弁護士に噛みつき、それをたしなめて続けていた久利生が、最後にたった一度だけ、静かに同調してみせるという展開。こういった、久利生が寄り添って見守るような物語の運びには、雨宮ではなく麻木のほうがふさわしいのかもしれない。

【初回視聴率】26.5%

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2014夏ドラマ感想~『若者たち2014』第1・2話~

しょっぱなから圧倒的な情念を感じるドラマである。渦巻いている、という言葉がこれほどふさわしいドラマは久しぶりかもしれない。どこもかしこも葛藤まみれの構図。それは言い替えれば古典的であるとも正統派であるとも言える。

そもそもが1966年に放送されたドラマのリメイクなので、古典的なのは当然かもしれない。だがそれにしても中途半端にモダンな設定にはなっておらず、古典的であることに迷いがない。配役にも脚本にも演出にも、クオリティのみで勝負してやろうという一本気な気概が感じられる。

初回から妊娠があり童貞喪失があり不倫がある。そのうちのひとつは未遂だが、ここまで同時多発的に家庭内トラブルが頻発するシチュエーションの強度は凄まじい。ラストに刑務所帰りの次男・暁(瑛太)が帰ってくる一瞬の予告編(本当に一瞬なのが潔い)まで含めて、1話目の濃密さは群を抜いている。

その情報量の多さと絡み合う人間関係の複雑さは、重さではあるが暗さではない。起こる問題はすべてそれぞれの人生を左右するヘヴィーなものばかりであり、答えのない命題だらけだが、誰の生き様にも根本的な明るさがある。それは妻夫木聡演じる主人公・旭の、文字どおり太陽のようなキャラクターが周囲を照らしているからかもしれないし、家族という集団が本来持っている(持っているはずの、持っているべき)エネルギーなのかもしれない。そういえば旭(あさひ)・暁(さとる)・ひかり・陽(はる)・旦(ただし)と、この一家は全員太陽にまつわる名を授けられている。

ムショ帰りの次男・暁を中心に構成された2話目は、1話目に比べれば随分シンプルな展開ではあるが、暁が犯した犯罪の内容が、どの角度から描写してもイマイチ伝わりづらく、後半に至るまで感情移入する糸口を見出すのが難しかった。感情的に理解しづらいという以前に、事件そのものがどうにも不明瞭で、誰が何をなんのためにしてこうなったのか、事件の全体像を把握させるための手がかりを小出しにしすぎたせいで、視聴者が状況を把握する以前に登場人物たちの感情が先走ってしまっている印象を受けた。

もちろん、視聴者に全体を把握させない状態でキャラクターを走らせるという演出も時に効果的ではあるが、あまりに前が見えないまま走り続けられると視聴者は脱落を免れない。

とはいえ、1話目で12.7%だった視聴率が、それでも不当に低すぎると感じていたにもかかわらず、2話目で7.8%まで下がってしまったというのはさすがにショックではある。数字にすべてが表れるとはもとより思っていないが、数字によってこの先制作されるドラマがある程度方向づけられてしまう可能性があるのも事実なので、やはり完全に無視することはできない。

この情念の滾りを濃密であると感じるか重すぎると感じるか、あるいは暗いと誤解するか。内容というよりは生理的に受けつけるか否か、肌に合うかどうかで評価が大きく分かれるとは思うが、個人的には今季もっとも良質なドラマであると思う。

【初回視聴率】12.7%

2014夏ドラマ感想~『ペテロの葬列』第1・2話~

初回2時間SPは、今どきのドラマにしてはさほど過剰な演出もなく、現実と非現実の狭間をピンポイントで突いた宮部みゆきの原作力を感じさせる充実した内容。

ただしメインとなる事件がバスジャックということで、当然だが中盤からバス内部のシーンが延々と続くことになり、展開が乏しくスピード感に欠けたのは、テレビドラマとしては少々悠長に構えすぎたと言えるかもしれない。

やはり映画と異なりチャンネルを気軽に変えられる(あるいはハードディスクから一瞬で消せる)メディアである以上、あまり視聴者の忍耐力をあてにすることはできない。閉鎖的かつ固定された場面設定は、その中身の会話劇が機知に富んでいたとしても、視聴者にかなり前のめりな姿勢を要求する。

配役に関しては、バスジャック犯を演じる長塚京三の名演が光る一方、彼が皆から「お爺さん」と呼ばれることに猛烈な違和感を感じた。お爺さんと呼ばれるには、明らかに見た目が若すぎる。そこは配役か台詞のどちらかを寄せるべきだっただろう。

そして第2回。初回の2時間で大きな事件発生から収束までひと通り完了してしまったため、2話目にしてすでに「戦後処理」あるいは「エピローグ」の様相。もちろん謎は残されており、不可解な人間関係上のトラップはそこかしこに用意されてはいるが、どうも「後日譚」といった感じの弛緩したムードは拭えない。

3話目での劇的展開に期待したいが、やはり1話目がピークという結果になる予感も。

【初回視聴率】9.1%